メルトスルー(コイン好きには超オススメ)のレビュー一覧
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橋本英司さん
評価1評価2評価3評価4評価55
2023/03/17 01:34
奇術師の大きな武器の1つに「これから何が起きるのかを言わない」点があります。メルトスルーはグラスと硬貨を持った時点で現象が推測できてしまいますが、カバー無しで貫通させるため「たぶんハンカチ等を用意してからだろう」と客の意識に少し油断が生まれます。にも関わらず唐突にグラスを通り抜ける硬貨。唖然としている客。ここで最も嫌な声は「それ、本当に入ってる?」です。貫通直後に改めさせるわけにいかないので、それを言わせる(考えさせる)間を与えぬように淡々と進め、通り抜けた硬貨を当たり前の取り出し方、グラスの口から出して最後に道具を改めるようにすると良いでしょう。「今見た現象を披露したまでですよ」、と。無表情、無言、油断、唐突、唖然、淡々、検証の順です。威風堂々。 非常に単純な原理の奇術です。それゆえに演者自らが貫通の仕組みに疑問を抱いているようでは上手くいきません。人間が持っている思い込みを利用している奇術のため、自分をも錯覚させて初めて成功します。この辺りは「これぞ奇術の中の奇術」と感服いたしました。錯覚を楽しむ芸術が奇術。 「1枚を貫通させるために複数枚使う」都合は演者側にあり、観客にとっては無意味なことです。そこにしっかりとした意味をもたせた手順があることで解説動画に価値を感じます。(客が選択した硬貨のみを貫通させてみせる) パームという言葉が再三出てくる解説動画です。しかしこのギミックは隠し持つような類のものではなく、先ず見えません。意識しないで演じたほうがラクです。仕掛けのしようがない日本硬貨使用ですし、透明グラス(別途用意)です。観たらどこが不思議なのか明白なパフォーマンスのため、複雑な台詞も不要。必要なのは「今のはキレイに通ったわ!」という自信。度胸。面の皮の厚さ。 取説のような商品紹介用紙に書かれている内容はともすれば演者のやる気が失せるショッキングな事実かもしれません。今始まったことではありませんので、気にせず演じるほうが考案者への礼節だと信じています。「これを演れる自分より考えた人のほうが数十倍素晴らしい」と、考案者に代わって自分が演じて作品紹介するのが私達購入者の役目です。
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