トゥルー・オア・フォールス(ウソをついても当たるカード当て)のレビュー一覧
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橋本英司さん
評価1評価2評価3評価4評価55
2016/10/30 23:01
野島伸幸氏が本当に演りたかったこと、「true-false.」の真髄は嘘をついても当たる第2段階めの現象だと思います。 しかし、第1段階だけでも充分に不思議です。 カードの特徴について質問をするとはいえ、予め定められたチャート表に沿ってあみだくじのように分岐していくことしか出来ないため、質問の返答によって演者が都合よく次の質問を変えることが不可能であり、観客のYes/NOは一切、ヒントにはならないからです。 演者の演ること、やれることが少なすぎて、手も足も出ないまま進行する。トリックの入り込む余地がない。それでも当たるから不思議。これが「true-false.」の不思議です。 ここを理解してくれない観客が相手だと「答えを得なければ当てられないとは、通常のカード当てより劣る」と誤解されてしまいます。特に普段からデック一つで不可思議なカード当てを造作もなく演じている演者を知っている相手ならば、尚更そう思われがちです。 また、1回だけ好きな場所で嘘をつくことは、思っていた以上に難しい。解説DVDではその辺りを打開する方法に触れてくださっています。しかし、それでも難しい局面にぶつかりました。 具体例をあげれば、アルファベットインデックスのカード(絵札等)が意味としては数字を表す記号でも、見た目の印象で数字ではないため、「奇数なのか偶数なのか」を質問された際に即答できず、さらにそこで嘘をつかなくてはならない場合、観客の考えることが複数生まれ、混乱してYes/NOが詰まり、嘘を何度目の設問でついたのか演者にわかってしまうことを隠そうとする心理から、窮屈なマジックになってしまったケースです。 トランプというものが老若男女問わず日常的な遊具ではなくなったために起きる、現代ならではの現象の一つだと思います。あまり皆さんカードゲームをやらなくなりましたから。ジャックという単語さえ身近ではないようで、それが奇数なのか偶数なのか、わからなくなった方がお一人おられました。「Jって奇数?」と訊かれてはカード当てになりません(笑)。 どうもスマートな演技にならないことが気になるので、嘘を何回目につくか、これを演者には内緒にしないことにしました。これで上手く進行します。2回めで嘘をつくと決められている場合、1回目の質問終了後、「次は嘘をついてください。真実とは逆のことをYes/NOで答えます」と演者が指示できますから。回答が詰まっても自然です。嘘をつこうとしていますから。 理想は「どこで嘘をついたのかさえ演者が知らないのに何故か当たる」という状況でしょうが、これはこれで別の問題が生じかねません。それは「嘘をついても本当のことを言ってもいい」という心理から、複数回の嘘をつかれてしまう危険性です。 その為、「どこかで1回だけ、嘘をついても当てられます」という台詞は控えたいです。これは「どこかで1回だけ、嘘をついてもいいですよ」と勘違いして受け止める方がおられるためです。(嘘をついてもつかなくてもいい、のように誤解される) 適した台詞としては「今度はどこかで1回だけ、必ず嘘をついてください。」といった命令口調に近い言い回しが良いように思います。 自分の個性に合わないと感じた「true-false.」ですが、とても面白く、実演・研究のし甲斐があります。 レギュラーデックをリフルシャッフル後、観客に2つにカットしてもらい、ここでシートを出して「そのカードを当てることはどう頑張っても不可能なのですが、知人から不思議なシートを紹介されたので今日はこれを試してみたいと思います」と言って第1段階を演じる、これを続けたいと思っています。相手が乗ってきた様子なら第2段階めに移行しようかなと。 ここまで夢中になるとは考えていませんでした。 「そばとうどん、どちらが好きですか?そばならカットした箇所の下のトップカード、うどんなら上パケットのボトムカードを手に取ってください」 これも演ってみたい(笑) -
橋本英司さん
評価1評価2評価3評価4評価55
2016/10/30 22:55
・リフルシャッフルとカット、そしてナンバー決定式カードセレクト デック52枚を28枚と24枚に分けます。 24枚グループを12枚ずつ2つに分けます。 28枚グループも14枚ずつ2つに分け、この14枚の上に先程の12枚を乗せた26枚パイルを2つ組み、重ねて52枚一組にします。 ちょうど中央から分けてリフルシャッフルをすると、トップ部分の大半は元24枚グループにあったカードです。 同じような理屈で、次のようなことも成り立ちます。 デック52枚を28枚と24枚に分けます。 24枚グループを12枚ずつ2つに分けます。 28枚グループは7枚ずつの4パケットにします。 トップから、 7枚パケット+12枚パケット+7枚パケット+7枚パケット+12枚パケット+7枚パケット と並べ、ちょうど中央から分けてリフルシャッフルをし、カットで2つに分けた下半分のパケットのトップは、元24枚グループにあったカードです。 前者はリフルシャッフル後のクロスカットフォースによく使うセットで、パケットをクロスさせながら「1から20までの間の数字で一つ決めてください」と指示します。 観客が仮に「12」と言ったらクロスされた上のパケットを持ち上げ、下パケットの12枚めを取らせます。 24枚パイルがデュプリケイトカードでもバレずに使える説得力あるカットフォースです。(【バイスクル 1/2/3/4 Wayフォーシング・デック】を参照。) 上手く使えばリフルシャッフルも相手に任せられます。リフルシャッフルが演者でも、その後のカットが観客であり、使うカードの枚数目を決めたのも観客であるため、納得してカードを取ってくれます。 後者はリフルシャッフル後、「トランプを2つに分けてください」と言えば、クロスカットフォースではなく、そのままカットされた箇所のトップカードを相手に取らせることが出来ます。 以上です。 何かの役立てたら幸いに思います。 -
橋本英司さん
評価1評価2評価3評価4評価55
2016/10/28 17:26
マジック嫌いな観客が相手でも、これなら関心を持ってくれそうなカード当て。 このシートさえ持っていれば借りたデックでいつでも行なえます。なんなら数枚足りないデックでもOK。 覚えることが少なく、また、忘れにくく出来ています。(シートに隠されたメッセージが・・・。) タネを知る前は「不思議」の一言。 タネを知ってしまえば「当然」の原理。 だからこそタネをお腹いっぱい知ってしまった演者にとっては、演り甲斐が薄れるかもしれません。 それでも安心して演じられます。観客はタネを知りませんし、全く追えませんから。 難しい技法を使うマジックも、セルフワーキングマジックも作る野島伸幸氏ですが、氏考案の「簡単なマジック」と称される作品には常々「マジックとは何か」を考えさせられます。ほんの一工夫でインパクトが大きくなる。 演ることは簡単でも、この計算され尽くした親切設計には脱帽です。痒いところに手が届くわかりやすい解説も素晴らしい。 「完成させるまでには大変だったろうに、これが1,500円かぁ・・・。」と思います。 演者にも観客にもストレスを感じさせない手順。簡潔明瞭。「手品って楽しいな」とつくづく思います。 「もし間違ってここで○○しても問題ありません。何故なら・・・」という、Because.が必ず解説されていて、改めて野島節の凄みを感じます。 手順と台詞を覚えてしまえばたった1枚のシート。タネを知ってしまえばこの紙切れに1,500円も出して購入しようとは誰も思いません。しかしそこにはトリックが随所に散りばめられています。数理トリックも心理トリックも。 シートだけで充分に不思議を演じられるのに、より完璧に演じる方法が解説されていることも嬉しいものです。 レギュラーデック2つでトゥルー・オア・フォールス専用のデックを組もうかなと思いましたが、これはやらないほうがいい。原案が一番いい。 「どうやっても、何を選択しても、こういう結果になる特殊トランプを使ってるのでは?」と問われた際、デックを点検させられないような不甲斐ない演目にするべきではないと結論づけています。 どこにも仕掛けらしい仕掛けが見当たらない、不思議で始まり不思議で終わるマジックだと思います。 ケチの付け所がないので評価は星5つですが、無理矢理欠点を挙げ、ケチを付けるなら「演者の腕の凄みが観客には感じない」という点はあるかなと。 シートというカンニングペーパーを観ながら質問しているだけの演者、にしか見えませんから。 トゥルー・オア・フォールスの凄みは、まさにここにあるのですが。 「書いてある通りに進めるだけ。それでも不思議が起こる。」 自分の個性として、私が演らない奇術・演らなそうな奇術に属しますが、それでも星5つです。
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